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2008年2月 4日 (月)

ALWAYS続・3丁目の夕日 ノスタルジーの欺瞞

現代の理想を昭和の良き時代に投影した映画である。



貧乏な文学青年茶川竜之介(吉岡秀隆)。とりあえず下町の駄菓子屋の主人の傍ら芥川賞を目指している。

そこに転がり込んできた少年、淳之介(須賀健太)。

最初は、茶川に鬱陶しがられるが、段々愛情が芽生えていく。

そこに少年の本当の父親(小日向文世)が現れ、「私ならば、この子を幸せに出来る」と言って、少年の返却を迫る...



そして、茶川はその父親に、今度の芥川賞を受賞出来なかったら、少年を返すと約束してしまう。



しかし、結局、受賞は出来ず、少年は父親に返さなければならなくなった。しかし、少年の茶川と別れたくないという熱意、受賞祝いに集まった近所の面々が作り出す「空気」に気おされ、結局、父親は少年の意志を尊重し、そのまま帰ることとなり、めでたしめでたし。



さて、この映画に流れる価値観は極めて現代的である。ある調査によると「自分にとって一番大事なものは何?」というアンケートによると40年前と現代を比較して一番減ったのが「お金」そして一番、増えたのが「家族」であった。「昔」の日本人の方が、現代人よりも「家族」よりも「お金」を大事にしていたのだ。



かつての日本には、お金よりももっと大事にすべき価値観があったという俗信とは別に、リアリティのある回答ではないか。



しかし、この映画の中には、そんなリアリズムは無い。すなわち、そのお金には全く、価値が置かれていないのだ。

それどころか、お金持ちになりたいという素朴な欲求はむしろ敵とされている。



また、血のつながった親子が優先されるべきという儒教的論理も相手にされない。中国・韓国ではこの映画どういった見方がされるのだろうか。



結局、少年と茶川と近所の人々の”気持ち”とそれらが作り出す「空気」が状況を決定してしまうという、誠にもって現代にも少しも衰えていない日本的な価値観に支配された作品ではないのか。



さらに言えば、芥川賞を受賞できなければ、茶川は少年を父親に返すという一種の契約も簡単にホゴにされるという強引ぶり。契約社会と言われる西洋の方はこの映画をどのように見たのか、感想が気になるところだ。



ちなみに、昭和30年代の最初の頃を肌で知っている私にとって、当時は、ネズミやハエの鬱陶しさ、夏の暑さや冬の寒さに厳しさ、そういった低次元の苦痛にいつも悩まされていたような気がする。だからこそ、みんなクーラーや自動車やマンションを選んでいったんでしょ。



そういった気持ちの変遷を考えないと、こういった欺瞞的映画に単純にだまされちゃうんだろうね。



まさむね

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