風太郎の野望は新しい時代の価値観となりうるか
銭ゲバの第2話を見た。
三國造船という大きな造船会社で派遣労働者として働く、主人公の蒲郡風太郎(松山ケンイチ)。
長女の緑(ミムラ)の運転する自動車にわざと当たり、キッカケをつくって、次女の茜(木南晴夏)の話し相手として、社長の家に寄宿することになる。
そして、三國造船を乗っ取ろうという野望を抱くのであった。
社会学者の山田昌弘氏は、現代における最も根本的な格差は、経済格差や教育格差ではなく、希望格差だと言っている。
生まれた環境によって、一人一人の心の中に生じる希望がすでに格差づけられているということだが、それは逆に言えば、ハングリー精神という物語が死滅したという事なのだろうか。
だとしたら、風太郎が持つ価値観(野望=夢)そのものが現代人にとって死滅しかかっているという事なのだろうか。
しかし、そんな時代だからこそ、風太郎の生き方はインパクトを与えるとも言えないだろうか。
前回のエントリーにおいて、風太郎の母親が語る「生きることは苦しくても、頑張っていれば、いつか幸せになれる」という価値観(人生観)に対して、現代的な価値観を提示できるかどうかというのが、このドラマの見所であるというような話をしたが、答えは早くも見えてきた。
それは、悪を引き受けてでも、死に物狂いでのし上がろうという風太郎の野望エネルギー(=ハングリー精神)である。
昨年来、「貧しくても一生懸命に正直に生きよう」という価値観は、「貧乏太郎」や「イノセントラブ」など、多くのドラマでも見られたが、それらの登場人物はあくまで無欲だった。
しかし、風太郎は違う。
「貧しいからこそ欲望を持とう」というメッセージは、70年代初頭から一回りして、今、新鮮だ。
このドラマが今後、どんどん視聴率を上げて行き、世の中にインパクトを残すまでになってほしい。
そういえば、派遣切り企業(昨年末600人)のスズキは、今後も、派遣労働者が主役のこのドラマを提供し続けるのだろうか。
しかも、前回には、交通事故(わざと当たる)という自動車メーカーとしてはかなり微妙なシーンも許容していた。
この太っ腹(あるいは無頓着)はどこまで続くのか。それもまた興味深い。
まさむね
« 撫子紋 -可愛い日本女性のシンボル紋- 斎藤義竜、東條英機、宇多田ヒカル... | トップページ | 人は様々なモノを作るが、思うようには作れないという話 »
「テレビドラマ」カテゴリの記事
- 「平清盛」 雑感(1999.11.30)
- なずなはヒールだ(2000.08.15)
- 大仁田と鶴太郎(2000.08.22)
- 鹿男あをによし 最終回で全ての謎はとけたのか(2008.03.20)
- ROOKIES 高福祉型×ネオリベの代理闘争(2008.05.10)
「社会問題」カテゴリの記事
- 「平清盛」 雑感(1999.11.30)
- オタク文化の将来(2000.08.23)
- 若者が消費しないという話(2008.06.23)
- 寺山と永山と加藤智大(2008.07.02)
- 美輪明宏が死刑賛成するのって意外!(2008.07.10)
この記事へのコメントは終了しました。
« 撫子紋 -可愛い日本女性のシンボル紋- 斎藤義竜、東條英機、宇多田ヒカル... | トップページ | 人は様々なモノを作るが、思うようには作れないという話 »
コメント