「新聞・TVが消える日」というタイトルに騙された
「新聞・TVが消える日」というタイトルにつられて思わず買ってしまったこの本。
何故、多くの人が新聞、テレビから離れてしまったのか。
報道が各社画一的なこと、論評、社説に全く新鮮味が無いこと、テレビのバラエティやドラマがマンネリに陥っていること、自社が出資している映画の過剰なパブリシティ行為などに触れるのかと思ったが、そういった内容的な指摘は全くなかった。
また、マスメディアが抱え、しかし、それゆえに報道すらされない問題、例えば、新聞社とテレビ局とのクロスオーナーショップの問題、新聞の再販問題、新聞販売店の問題、記者クラブ制度の弊害、テレビ局の電波特権の問題、下請け会社に対する格安発注の問題、行政との癒着などに切り込むのかと思いきや、それらの問題もほとんどスルー。
著者が元毎日新聞の記者ということで、昨年、ネット上で話題になった毎日変態新聞問題に対するコメントも、期待したが...僕が間違っていたようだ。
さらに、ネットでの情報に関して以下のように言い切っている。
ウェブサイトには、真偽あやふやな情報や人権侵害情報、無責任で為にする抽象などが氾濫している。「ネットの情報は、信頼できない」という不信感が根強い。
これは具体的にはどのサイトのことをいっているのであろうか。少なくともネットユーザーは、より高度なリテラシィを求められるのは確かかもしれない。しかし、現在よりネットユーザーのなかで不信に思われているのはむしろ、新聞やテレビなどのほうだと思う。編集権とか、時間の都合とかの理由で勝手に編集されていることへのマスメディアへの不信はネットユーザーであれば誰もが共有しているのではないか。
僕の個人的希望だが、例えば、首相のぶら下がり会見などは、編集せずに出来れば生で中継するようなメディアが是非登場してもらいたいものである。また、国民が本当に知りたがっている質問を直接伝えるようなシステムは出来ないものだろうか。
◆
さて、この本の内容のメインと言えば、ネットにコンテンツを配信する時の困難(著作権処理の問題)、ニュースをポータルサイトへ提供することのジレンマ、放送と通信の融合の難しさというような「あたり前」の業界内の話。
さらに、音楽のネット配信に関しても、CD販売が減っているが、配信やライブは伸びているため、音楽業界としてはトントン(「CD不況」だが「音楽不況」ではない)とか、ゲーム業界もこれからは世界に通用するオンラインゲームをつくるべきなど、門外漢が本を書いてまで主張するようなことか?と疑問を抱かざるを得ないような内容だった。
おそらく、読者として著者(1944年生まれ)と同世代の諸先輩方を想定しているのだろう。
たしかに、わかりやすくて正確な文章はさすがである。ただ、僕はターゲットではなかったようだ。
今後、本を購入するするときは、せめて目次を見るなどして、気をつけたいものである。
まさむね
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