ビッグヒットが無くても生き続ける音楽ビジネス
今年に入って、オリコンチャートにおいて、いわゆるJ-POPのヒット曲が生れていないように見える。
勿論、「約束」(KinKi Kids)が初週で17万枚、「One Drop」(Kat-tun)が初週で28万枚、「Believe/曇りのち、快晴」(嵐,矢野健太 starring Satoshi Ohno)が初週で50万枚以上と、さすがにジャニーズ系アイドルは順調に売上げを上げてはいる。独り勝ちと言ってもいいだろう。
しかし、一方でその他では目立ったタイトルはないのである。
狂い咲いたように「愛のままで…」(秋元順子)がロングヒットを続けているだけだ。
実はこのような状況は数年前から徐々に起きている。
例えば、昨年は1枚もミリオンヒットは生れていないし、一昨年は、「千の風になって」(秋川雅史)だけであった。
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大きな流れで言えば、戦後のポピュラー音楽は、大衆音楽(~60年代)>若者音楽(70年代~90年代)>ファン向け音楽(00年代~)という方向に進んでいる。
別の言い方をすれば、大衆音楽の時代は、みんながその音楽を知っていた時代、みんなが歌えた時代。
また、若者音楽の時代は、大きく言えば、ニューミュージックと演歌というように、世代によって聴く音楽が分割されていた時代。
そして、ファン向け音楽の時代は、世代の中においても、好きな音楽がさらに分化してしまった時代である。
実は、これらの進歩は、その時代のテクノロジーにも連動している。
それは、大衆音楽の時代はラジオやレコード、若者音楽の時代はCD、そして現代は携帯(iPod)である。
これは非可逆的な流れだ。今後、この流れが戻ることはないであろう。
そのため、CD発売数のみでのランキングが既に現代の音楽状況を映す鏡として十分ではない。
今年の4月からレコ協で、毎週ダウンロードランキングを発表するという。そのチャートの動向が気になるところだ。
オリコンチャートとは別のランキングが見られることであろう。
おそらく、EXILE、Greeeen、宇多田ひかる等の楽曲が上位にランキングされることが予想される。
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また、音楽を聴くという行為の側面として、自分が好きだからという動機の他に、同じようなファンと連帯する楽しみというのがある。
その連帯の範囲であるも先に述べた流れと同様に、大衆音楽の時代は日本人、若者音楽の時代は世代、そして現代では個別のファン層という分化が進んでいる。
勿論、それは大きな意味では分化という事であるが、一方、コミュニティとしては手頃な範囲になってきたとも言える。
分化したファンの横の連帯のための場を提供するというビジネスが今後益々、収益確実なものとして定着していくであろう。
具体的に言えば、会員制のファンサイトにおいて、SNSを運営、会員同士の情報交換の場を提供するとともに、様々な細やかなアーティスト情報やサービスの提供するというような方向である。
特に女性ファンは、青春時代にファンになったアイドル、バンドを継続して好きになり続けるという習性があるという。
ファンサイトビジネスは、CD販売、新曲ダウンロード、コンサート動員以上に継続的なビジネスチャンスになると思われる。
過去の楽曲のロングテールダウンロード販売とともに、アーティストを長く支えるインフラとして期待されている。
一方で、アーティストファンの島宇宙化(ファンのタテ割細分化)が音楽ビジネス全体のパワーを減させるのではという懸念がないわけではないが、まだまだ将来性のある業界であることには違いないと思う。
まさむね
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