白鵬には大横綱の風格が出てきた
白鵬が10回目の優勝を果たした。
千秋楽での朝青龍との一番は、その強さをいかんなく発揮した一番である。
残念ながら朝青龍はほとんど何も出来ず、白鵬が得意の右四つの体勢から上手を取ると、朝青龍は自ら諦めてしまったかのような印象すら受けた。
いわゆる地力の違いを見せ付けるような内容に、朝青龍と白鵬との、現時点での差が残酷にも現れてしまったのではないか。
白鵬は、不知火型の横綱としては、初の二ケタ台の幕の内優勝回数ということで、それまで不知火型横綱で一番の優勝回数を誇った伝説の大横綱・太刀山の記録を抜いたことになる。
史上3位の最年少10回優勝達成記録、24歳0ヶ月。これは、北の湖や千代の富士よりも早く、順調に行けば、優勝回数20回、30回も夢ではない。素晴らしい記録の達成に、はやくも大横綱誕生を予感させる。
さて、その白鵬の力士としてのタイプであるが、非常に静かな印象がある。
激しいツッパリや、派手な投げ技も持っているのだが、基本的には相撲の基礎に忠実に、前に出ながら自分が有利な体勢を徐々につくり、最後、相手が何も出来ずに、いつの間にか土俵の外に出ている。
そんな相撲が目立つのだ。
千秋楽の朝青龍との一番もそういった内容であった。
先ほど、不知火型の大横綱として名前を出した太刀山が現役時代に、「にらみ出し」という珍妙な決まり手で勝ったという伝説がある。これは、仕切っているうちに、相手の力士がじりじりと下っていき、勝手に土俵を割ってしまったというウソのような本当の話だ。
ようするに、、その内面から出てくる気迫によって相手を何もしないうちに負かしたということであろう。
白鵬を見ていると、そんな伝説を思い出す。
相手がいつの間にか負けている、何もしないうちに気付いたら土俵を割っている、そんな理想的な「横綱相撲」が出来る風格を白鵬は徐々に身に付けているのではないか。
末恐ろしいと、彼のような力士に使う言葉である。
★
その他、今場所、よかった力士を上げてみよう。
まずは、豪栄道。まだ、強いときと、あっさりと負けてしまう時との相撲内容の差は大きいが、ご当地、大阪での人気は抜群だ。
これから、大阪場所が来るたびに、豪栄道の季節が来る予感がする。(左写真は把瑠都をうっちゃらんとする豪栄道)
そういえば、大阪出身の力士はあまり記憶にない。
僕が印象に残っているのは前の山と卓越山くらいか。
前の山はその鶯色のまわしが印象的なハンサムな大関。卓越山は、むしろ引退後、全日本プロレスに加入した高木功としての印象の方が強い大きな力士だった。
ただ、自分としては、同じ大阪出身で1986年生まれの若い格闘家という意味で、柔道の石井慧と印象がダブる。二人とも聞かん坊的な面構えがいい。やっぱり格闘家は体全体から、いい意味での「わがまま」さがにじみ出てるほうが魅力的だ。
また、自分の贔屓で言うならば、把瑠都と山本山が勝ち越したのがとりあえず嬉しかった。
両方とも、尾上部屋の大型力士だ。二人とも大型力士にありがちな波の多さが気になるが、逆にいえばその「おおらかさ」が魅力でもある。
特に把瑠都は、一時は4勝7敗まで追い詰められながらも、結局は千秋楽で星をそろえた。以外に精神的に強いのかも。
千秋楽の相撲も、愛子様のお気に入り琴光喜の下手投げを上手投げで投げ返す強引な取り口で勝利をもぎ取った。把瑠都ならではの力相撲である。
今場所は中盤、いつもの強引な「肩越しの上手つかみ」も影をひそめ、ヤバイ印象だったが、後半は自分を取り戻したようだ。
やっぱり、把瑠都はああじゃなくっちゃ。
最近、あまり見かけなくなった「つり出し」を復活できるのは、彼しかいないと思う。
また、山本山も今場所は楽しませてくれた。
彼も把瑠都と同じように中盤に、疲れたのか、相手に研究されたのか、苦しい土俵が続く日々もあったが、負けても館内を明るくしてくれる雰囲気がいい。
天性のエンターテイナーなのだろう。
舞の海>高見盛>山本山という日大個性派の系譜は脈々と生きているといったところか。
★
いずれにしても、大阪場所はアッという間に終わってしまった。
次の場所では、自分も仕事復帰しているだろうから、毎日、全取り組みを見ることは出来なくなると思うが、それでも、さらに応援し続けたい。
まさむね
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