「日本人の精神と資本主義の倫理」は胡散臭かったり、面白かったり
普段は、対談本というのはあまり読まないのだが、BOOKOFFで思わず買ってしまった。
茂木健一郎先生と波頭亮先生の対談「日本人の精神と資本主義の倫理」という本だ。
基本的には、日本にハイカルチャーが無いことを二人で嘆いている内容だである。
お二人ともイギリスなど、海外経験が豊富なため、日本の大衆情報化社会を嫌悪しておられるようだ。
特に茂木先生いわく「正直に言って、僕は日本の地上波テレビを途轍もなく憎んでいます。」だって。それはないだろう。あれだけテレビのバラエティに出まくっていながら(笑)。
でも、僕もテレビばっかり観ているが、時として茂木先生と同じような感想を持つこともある。
おそらく、多くの人が、しょうがなくテレビを見ているのが現代だ。
ただ、テレビは社会を映す鏡というのも一面の真実。
だから、テレビを見ていないとわからないことも沢山あると思う。
例えば、最近の麻生内閣の支持率アップの理由とか、テレビを見まくっていれば簡単に予想できると思う。
話をもどそう。
日本のハイカルチャーが無いという話だった。
別の言い方をすれば、「売れてなんぼのもの」に拮抗する価値観が無いのが問題だということ、その価値に対抗する軸が無いことが問題だということである。
確かに、テレビを見ているとそんな気がしてくる。
特にバラエティ番組を見ていると、各局一斉にある時から急に使われなくなるタレントがいたりする。
例えば、エドはるみとか、髭男爵とか、ここ数ヶ月あまり見なくなった。かわりに、最近とみに出演しまくっているのがオードリーだ。
しかし、一人ひとりの個人を、よく見ているとはたして、そんなに画一的なのだろうか。日本人は。
僕はそうでもないように思う。
みんないろんな事を考えて、いろんなものが好きだったり嫌いだったりなんじゃないかと思う。
少なくとも僕のまわりの人々はそうだ。
でも漠然と、大衆とか言っちゃうと、没個性に見えちゃうんだな。これが不思議に。
またテレビのバラエティにしたってそうだ。かつて村松友視さんが、プロレスを語ったときに、「ジャンルに貴賎無し、ジャンルの中に一流と五流がある」と言っていたが、まさしくそう。バラエティ全般がくだらないのではなくて、バラエティの中に面白いのとくだらないのがあるのだ。
これは僕の個人的感想だけど、バラエティの中でもロンハーは一流だけど、行列は五流だ...と思う。
さて、この本の最後の方で、茂木先生が面白い事を言っている。
天皇陵に対して、「つまり放っておかれていることで、それ自体が価値を帯びてくる時代だと思うわけです。東京なんてひどいものでしょう。触れれば触れるほど汚くなっていく。しかし、放っておかれているものは、近代文明の影響を受けないから、そこには原点が残っているように思うわけです。」とのこと。
そういう文脈でいえば、僕は鄙びたお寺の墓場が好きだ。
そこに入るとまるで異空間が広がっている。
さらに、そこに有名人の墓があったりすると、急に想像が膨らむ。その人に本当に会えたような気すらするのだ。
先日、恵比寿に行った帰りに、田町の蓮乗寺という日蓮宗のお寺に行った。
勝新太郎の墓を見に行くためだ。
ここの墓場はよかった。
都会の中でここだけ取り残された感が素晴らしい。
特に、狭いところに墓が密集しているセコさがいい。
一般の人の墓とスーパースターの墓がまるで分け隔てなく乱雑に存在しているろことがいい。
ところで、このお寺は正式名称が光秀山蓮乗寺という名前だ。ん?光秀?と思ったら、寺の寺紋も剣桔梗だった。
これには深いわけがありそうだ。
こんなちょっとした謎を投げかけてくるところがいい。
そういえば、振袖火事の本妙寺も日蓮宗だし、光秀が信長を殺した本能寺も日蓮宗だ...などなど。
ディズニーランドのような完璧な人工的な謎も確かに面白いだろう。
でも、こういった自分で見つける謎も(欠点は答えが無いことが多いことだが)時には面白い。
あと、最後に、幻冬舎新書のタイトルのつけ方は上手いな。ついつい買いたくなってしまう。さすがその道のプロだ。
まさむね
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