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2009年4月11日 (土)

「REVOLUTION 9」をどう聴くか?それが問題だ!

ホワイトアルバムに収録されている「Revoluion 9」ほど、ビートルズファンを悩ます曲はないだろう。



中山康樹氏は、「これがビートルズだ (講談社現代新書)」でこう述べている。



ガラクタ中のガラクタであり、前衛でもアートでもなんでもない。

もしこれが許せるという人間がいまもいるとしたら、それはヨーコ本人、そしてジョンの、ビートルズのほんとうの偉大さに気づいていない人間だけだ。

たんなるガラクタに曲も演奏もない。ただ意味のなさすぎる会話やサウンドがつながれているだけだ。ビートルズ史上最長の八分ニ十一秒にして最大の無駄。



まぁ、中山さんがそう言われるのであれば、おそらく僕はビートルズのほんとうの偉大さに気づいていないのだと思う。

実は、僕はこの曲をたまに無性に聴きたくなるのだ。

何故かわからないが、この曲には、心の奥に眠っている「何か」を刺激する「何か」があるにちがいない。

            ★

ジョンはこの曲に関して「革命を絵にしたもの」と言っているが、おそらく、彼にとって、革命とは自分の心を変えることである。つまり、いわゆるマルクス主義革命のような、暴力によって政権を奪取することではなく、個々人の心を変革すること、それが革命だと思っていたようである。

彼は、元々この曲とつながっていたという「REVOLUTION 1」でこう言っている。



change your head

君の頭を変えろ



だから、固定観念を疑え!...と。そうだっ、まずは「ビートルズの曲とはこうあるべきだ」というイメージを壊せ...と...いうことなのだろう。

おそらく、ジョンが革命というものに向き合い、自分の立場で、それを実践したのがこの曲だと僕は解釈する。

ジョンはジョンで1968年という熱い時代に正直であろうとしたのだ。

例えば、この曲がレコーディングされたのは、1968年5月30日、6月6日、10日、11日、20日、21日と言われているがその頃、世界はどのように動いていたのかを見てみよう。



4月04日 - マーティン・ルーサー・キング暗殺。

5月11日 - ドイツのボンで50,000人の反戦抗議集会

5月18日 - イタリアのローマでの大規模ストライキ

5月19日 - ジョンがヨーコと最初の夜を過ごす。

5月21日 - フランスで、五月革命勃発。(1000万人デモ)

5月30日 - REVOLUTIONのレコーディング始まる。

6月05日 - ロバート・F・ケネディ暗殺。

7月14日 - プラハの春。

7月23日 - パレスチナ解放人民戦線がハイジャック。

8月20日 - ソ連軍がチェコスロヴァキアに軍事介入(チェコ事件)。



まぁ、凄い時代だった。ジョン、そしてヨーコの頭の中で、いろんなものが煮えたぎっていたのは想像に難くない。あの時代の、あの瞬間を音にした、それが「REVOLUTION 9」だったのである。

自分はその時代、小学生だったから、当時の「空気」を感じたとは言えない。でも、その後、いろんな人の話を聞くと、凄かったんだろうなと想像する。例えば、今では、カナダの田舎町で寿司職人をしているある人は、新宿騒乱(1968年10月21日)の夜、明日にでも革命が起きるって本当に信じてたって言ってた。今考えると笑っちゃうような話だけど、そういう「空気」があったことは確かなんだと思う。

            ★

さて、話を戻そう。

そして、ジョンはこの曲をビートルズの自主レーベル・アップルの最初のホワイトアルバムに入れることを強く主張した。

ポールとリンゴは強く(リンゴがどれくらい強かったのかは疑問だが)反対したらしいが、結局、ジョンはそれを押し切って、ホワイトアルバムに収録する事となった。



ジョンは、この曲をホワイトアルバムに入れることによって、最大限のアバンギャルド効果を上げたかったのだろう。それは、こういった前衛音楽は、それがどういった文脈に置かれるのかってことが重要だからだ。例えば、マルセル・ジュシャンが便器を展覧会に出展して「泉」と名付けたように、ジョンは、この曲を、ビートルズのアルバムという文脈に入れる事で完璧なコンセプチュアルアートにしようとしたわけである。

だから、「Two Virgins」のような別作品では意味がなかったんだと思う。

            ★

おそらく、この曲の最大のクライマックスは曲の最後の方でヨーコがつぶやくこの言葉だ。



You became naked

あなたは裸になったのよ



ようするに、ジョンはここで「全ての曝け出し宣言」をした(させられた)のである。

そして、この後、とにかく彼は自分に正直でありつづけようとした。

何も隠さない前人未到の表現道を進むのだ。



おそらく、この作品の延長線上に、「ジョンの魂」があり、「イマジン」がある。

そういう意味でも、この作品はジョン史上、重要なポジションにあると思う。



P.S.なんだか、最も「REVOLUTION 9」的でない普通の結論になってしまってスマソ。



まさむね

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