「ぼくの妹」に共感してしまう説得が苦手な僕
他人との折衝事が物凄く下手な人がいる。
実は僕もそうだ。
プレゼンや会議の前に、いろいろと作戦を立てるのだが、そんな作戦はアッという間に吹き飛ばされ、結局、話の流れで、自分の立てた筋道とは全く関係のないオチになることがよくある。
日曜劇場『ぼくの妹』の主人公・江上盟(オダギリジョー)もそんなキャラクタだ。
彼は天才的な外科医であるが、他人とのつき合い方がからっきし下手である。
特に妹の颯(長澤まさみ)がいつも勝手な行動をとるのだが、それを止めようと説得を試みるのだが、必ずと言っていいほど失敗するのだ。
正確には覚えていないがこんな感じの会話がよくある。
盟「だから、お前、あんな奴と一緒になっても幸せにはなれないぞ」
颯「大丈夫。今度は絶対。」
盟「いいか、あいつだけはやめとけ。お前はいつだって...」
颯「お兄ちゃんだって恋愛音痴のくせに」
盟「お、お前、それとこれとは話は全然別だろ」
颯「とにかく、お兄ちゃんには迷惑かけないから...」
といいながら、いつも妹の説得に失敗する江上盟に共感する情けない男は多い事だろう。
僕もそんな一人。彼に、最上級の親しみを覚えるのである。
「You Can't Alway Get What You Want」(無情の世界)これはローリングストーンズの名曲であるが、何故、この世はいつも上手くいかないのだろう。
昨日のエントリー(『A Day In The Life』~現代社会にぽっかり開いた穴)にも書いたが、最近僕は、世界にはいくつもの穴が開いているというイメージに囚われている。
その穴は、いつ、自分の足元をすくうのかわからない。
そして、その穴は、ある時は具体的な敵として、事故として、痛みとして、またある時は、自分の内面の欝として、怒りとして自分を襲うのだ。
でも、それでも、僕たちは日々を繰り返し生きていかなくてはならないのだ。
雇用問題、少子化問題、環境問題、いろんな問題はいったい自分と関係があるのか。それとも無視していいのか。気に病むべきなのか、やり過ごすべきなのか。
真面目に考え出すと全くわからなくなる。
でもとりあえず、日曜日の夜「ぼくの妹」を観ると、穴に怯えているのは自分だけじゃないって気になる。
それだけでもこのドラマは僕の救いだ。
小さなことだけど、ドラマの中で桜井さん(大滝秀治)が亡くなって、その遺骨を岡山の田舎町に届けるシーンがあった。
既にこの生れ故郷に身寄りの無いこの爺さんの遺骨を受け取ってくれた寺の住職の名前は花房ソウゲンという名前だった
。ソウゲンはどういう字を書くのかは不明だが、花房といえば、岡山を知行としていた旗本の家で、宮内次官、枢密顧問官、日本赤十字社社長なども歴任した花房義質はそこの出である。
そんな歴史を踏まえると、その花房の縁者が、同じ岡山で寺の住職をしているというこのドラマ上の設定は、歴史学的にも誠にリアリティのある話である。
こういった細かいところにこだわってるということだけで、僕はこのドラマを信頼してしまう。
僕は最近、散々、TBSの悪口を書いている(TBSの断末魔こそ、今のテレビで最高の見世物だ、TBS 、大丈夫か?)のだが、さすがにドラマは一日の長がある。TBSにはこれからもいいドラマを作ってほしい。
ちなみに、この寺の家紋はおそらく「雁」系であろう。まぁ、ほとんどどうでもいい豆知識ではあるが。
まさむね
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