テレビの老獪さを表現した今回の『ザ・クイズショウ』
『ザ・クイズショウ』(日本テレビの土曜日の21:00~のドラマ)6日の放送回はさらに、面白い局面をむかえた。
もともと、この『ザ・クイズショウ』は、テレビという不自由なメディアの本音をドラマという形式で告発し、(「『ザ・クイズショウ』に見るテレビ業界の欲求不満と嫉妬」)同時にまた、テレビのウソをも告発しているという面も持っている大変ユニークなドラマであった。(「『ザ・クイズショウ』の欠点はそのままテレビの欠点だ」)
そして、6日の放送回では、さらにテレビの偽善性、犯罪性にまで話を及ばせてきたのである。
話はこうだ。
『ザ・クイズショウ』のプロデューサの冴島涼子(真矢みき)がかつて、テレビ局の報道スタッフとして、MC神山(櫻井翔)やディレクター本間(横山裕)の友人(?)で、飛行機事故で亡くなった新田美咲(水沢エレナ)の死を過剰に演出し、出世のための道具にしたという過去が暴かれるのである。
彼女は、その事件をより衝撃に見せかけるために、亡くなった少女の人生をより悲惨に演出して放送し、その放送が優れた報道として評価される。彼女は、この報道のおかげで、出世街道への切符を手に入れたのだ。
ディレクター本間は、そのことの「罪」をクイズを進めることによって暴き、さらにドリームチャンス(最後のクイズ:これに正解すると夢がかなう)では、「復讐」として冴島の子供の美野里(大橋のぞみ)が自分の本当の子供ではないという真実を暴く...か!?という瀬戸際まで追い詰めるのだ。
ここで面白いのは、実際、同じ局での報道番組『ZERO』のニュースキャスターとして活躍する櫻井翔を、ドラマの中では、その報道番組の偽善を告発するMC神山の役をさせるという、ある意味、凝った「自爆」あるいは「自虐」が演じられてるからだ。
テレビ業界はついに蛸のように己の足を食い始めたのだろうか...
しかし、ドリームチャンスでの結末は、残念というか、当然というか、ドラマは大きく逆に舵が取られてしまった。
冴島は、銀河テレビに復帰することを諦め、美野里を本当の子供だと「ウソ」をつくのだが、何故かそれが「正解」となってしまうのだ。結局、彼女は、テレビ局社員という地位も子供も両方ともキープするという結果に落ち着くのであった。
すなわち、このドラマの中でテレビ局の過剰な報道姿勢は、現代社会の中では必要だと、(低く見積もっても必要悪だと)判断されたのである。そして、親子愛という誰も否定できない物語の影で、テレビの報道と、社員の美味しい生活は正当化されるという、平凡なオチとなってしまったのであった。
やはり、何かを捨てきれないテレビ、その老獪なしぶとさは、ヒールのプロレスラーのようでもある。
しかし、僕はその老獪さにも惹かれるものを感じてしまうのだが。
ちなみに、マスコミの報道に対する姿勢に関しては、以下のような記事を紹介しておきたい。
私個人の気持ちをいえば、取材の電話をかけてきてくれたのはありがたいことだけれども、なぜそこまで人を誘導尋問で引っかけて、私が考えてもいないことをコメントとして掲載しようと思うのかが、もうわからない。取材者と取材対象の信頼関係なんかどうでも良くて、自分が作ったシナリオ通りに相手をしゃべらせればそれでオッケーという神経が、どうにも理解できない。週刊誌記者の取材に心が汚れた(佐々木俊尚 ジャーナリストの視点 )より
まさむね
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