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2009年7月16日 (木)

雨宮処凛が転職サイトで労働問題を語ることを許せ!

雨宮処凛というライターがいる。彼女の『「生きる」ために反撃するぞ!』(筑摩書房)等の著書や、テレビ等の発言は、徹底して働く者の側に立つ。その活躍ぶりは「プレカリアートのマリア」(朝日新聞命名)とでもいうべき存在感である。



ご存知かとは思うが、彼女自身、かつてはリストカッター、そして右翼少女、ゴスロリファッションの小説家など、紆余曲折の人生を送っている。ちょっとした来歴だけを見てもわかる。彼女は、凄い人なのである。



しかし、僕はそんな彼女のインタビュー記事「無茶な要求に応えようと、がんばりすぎる正社員たちダメな人でも安心して働ける社会であってほしい」を読んで微妙な違和感を覚えた。

       ★

確かに、彼女がここで言っているように、現代日本社会は、労働者にとって過酷な状況にある。サービス残業や休日出勤などによる長時間労働は、労働者の心身を徐々に蝕んでいく。しかも、労働者は、そんな状況にありながらも、社会や企業の価値観に過剰に適用しようとして、さらにスキルアップや過剰労働に身を捧げてしまうという悪循環である。

しかし、その反面、人間というものは、ある種、限界状況でこそインパクトのある生き方が出来るという困った習性があるのも事実なのである。

おそらく、雨宮氏も様々な限界的な人生経験から、現在の道をつかんだのであろう。その宿命にも似た彼女の道程を思うと、頭の下る思いがするが、一方で、彼女自身が本当に大事だと思っている自身の価値観と、彼女が世間の人々に勧めるような生き方のズレが僕には気になるのだ。

誤解を恐れずに敢て言わせていただけるのならば、彼女は、自身のインパクトのある人生のために、他の多くの労働者には凡庸な生き方を勧めているように僕には見えるのである。



そしてもうひとつ、彼女のこのインタビュー記事が掲載されているのが、求人情報サイトというのも違和感を覚えたひとつの理由である。

彼女がここで「労働状況の告発」を行うことは、読者の転職を勧めることにつながり、そうすると、多くの場合より過酷な労働条件に人々を追い込む結果に助力することになってしまうという残酷な循環に彼女はどれだけ自覚的なのだろうか、それが違和感の内実である。

       ★

しかし、上記の事をとりあえげて彼女を攻めるのも酷だろう。それが資本主義社会を生きる僕たちの宿命なのだから。

小泉改革を批判しながら、反面で自分の癌をネタに、新自由主義の尖兵である外資系生保会社のCMに出続ける鳥越俊太郎氏を許すのと同様に、僕は彼女もギリギリ許したいと思う。



まさむね

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