BeeTVにおける配信方法に見る携帯と動画の最前線
前回(7月)、BeeTVをネタに、携帯電話と動画について考えてみたが、今回は、動画配信の方法とそのインターフェイスという面で、BeeTVを眺めてみようと思う。
良くも悪くも、今後の携帯での動画配信のスタンダードになりうると予想されるBeeTVだ。
熟慮されているのは、動画の内容だけではない。いかに動画を配信するのかという部分にも業界をリードしようという志の高さが垣間見られる。
今回はそのあたりを概観してみようと思うのである。
【統一的なフロー】
インタラクティブメディアにとって重要なことの一つに、いかにして、視聴者に操作方法を慣れさせるかという事がある。
BeeTVでは、愚直なまでに、すべての番組で統一的な画面構成(上図)で番組配信を行なっている。一般的に、携帯サイトでは、設計時、あるいはサービスイン時にはそれなりに統一的なオペレーションを志すものなのだが、その自由さゆえに、様々な機能が付加されて、結局はユーザーにわかりにくいサイトになってしまうことがよくある。BeeTVが今後、この統一的なフローを堅持できるか、あるいは「現実」に流されてしまうか、それはそれで一つの見ものである。
【定期配信の厳格化】
ご存知の通り、BeeTVはエイベックスとNTTの合弁企画である。さらに言えば、番組の多くがフジテレビ系の制作会社が手掛けている。さすが、50年のノウハウというか、番組の質は高いし、新しい創意工夫がなされている。

話を戻そう。ようするにこのBeeTVにテレビ系の文化が入り込んでいるということもあり、このサイトの番組配信はきっちりとしたスケジュールによって成り立っている。
タレントブログやポータルサイトのニュースに代表される「いつ更新されるかわからない」というルーズさの対極にある厳格な運営が今後の携帯動画配信のスタンダードになるか、それとも、来てみたら更新されていた的なルーズさが生き残るのか、そこが見所である。
【配信時期の明示】
かつて、ローリングストーンズの歌に「Who wants yesterday's paper?Nobody in the world.(誰が昨日の新聞が欲しいっていうんだい、そんな奴どこにもいないさ)」というフレーズがあったが、すべてのエンターテイメントコンテンツには旬の時期というものがある。
いくら素晴らしいコンテンツだとしても、それが過去のモノだと認識された途端に価値が減じるように感じてしまうのは宿命なのであろう。
BeeTVでは、すべての番組にそれがいつ配信開始されたかが明示されているため、それが旬かどうかが一目でわかるようになっている。
それはある意味、番組の価値に対する残酷な序列につながりうるのだが、ユーザーにとっては嬉しいこともある。
おそらく、この機能も、BeeTVが豊富な番組を次から次への供給できる体制と資金に自信を持っているからこそ出来るのであろう。
【視聴済/未視聴の明示】
これは親切な機能である。連続モノのドラマなどをオンデマンドで見ていると、どこまで見たのかがわからなくなることがよくある。勿論、見直してみれば、それは判明するのだが、ストリーミングの番組だと、いくらプログレッシブ方式と言っても「再生ボタン」をクリックしてから、番組がはじまるまで若干の時間がかかってしまう。再生を開始してみて、番組が既に視聴されたものだとわかると、何故かわからないが、そのロスした時間が物凄く惜しいのである。
そういう意味で、BeeTVの視聴済/未視聴表示機能は本当に助かる機能である。惜しむらくは、番組を全部視聴したのか、それとも、一瞬ダウンロードを始めてすぐに止めてしまったのかをも区別してくれるとさらに嬉しいのだが、現時点ではそれは無理というものなのかもしれない。
【続きを見るページ】
BeeTVでは、さらに既に視聴したそれぞれのシリーズモノの次の回を教えてくれる「続きを見る」というページが用意されていて嬉しい。理論的には出来るだろう事は想像できたのではあるが、実際にこういうページが用意されてみると、「あればいいな」が「本当にあった」という感じで嬉しいものだ。
しかし、実際のところは、多くのユーザーは使用しているのであろうかという一抹の疑問が残るのも確かだ。
こういうページを用意する事がスタンダードになってしまうと、それはそれで携帯サイトの進歩なのであろうが、弱小サイトにとっては、作業負荷だけが増えてしまうという可能性がないわけではない。
【「今すぐ見る」リンク】
各番組に用意された過去番組の一覧、解説ページ等、いわゆる「嬉しい」機能と同時に、是非とも欠かせないのが、とにかく「今すぐ見たい」という欲求に答える機能だ。そういう意味で、このリンクは必須だろう。よく、ユーザーに固定的な操作手順を強制してくるようなサイトがあるが、それはあくまでも作り手側の論理、見せたい側の論理に過ぎない場合が多い。
【字幕の選択】

これは視聴者がその番組を見るシチュエーションを考慮に入れての配慮であろう。例えば、夜、一人で寝る前に見るときは、字幕は必ずしも必要ではないが、通勤電車の中で、音を消してみたい場合、字幕は必須だ。
BeeTVでは、「鳥肌怨読棺(とりはだおんどくかん)」という国生さゆりが朗読する怪談話において、この機能が付いている。字幕ありモードで、この番組を見ると、それはあたかも、背景に動画がある怪奇小説を見るような感覚があり、これは新しいと思った。
【文字解説の充実】
これは今までのテレビでは出来なかったことである。テレビとテレビガイドが一緒についているような機能だからだ。今後、製作者のスタッフブログなどともリンクしてさらに発展していく可能性のある方向性だ。さらに言えば、ユーザーからのコメントとのリンクも展開としては考えられる。そうなると、理論的にはBeeTVと2chとの融合という話になる。それはそれで実現を期待したい。
【目立つランキング】

これは、視聴者にとっては有効な機能であるが、製作者側、あるいは出演タレントにとっては、残酷な機能である。大物タレントや大物司会者の「過激を売りにしている」トーク番組が常にランキング外で、ミュージシャンのダラダラした楽屋風景映像がランキング内に入っているのを見るとそのことは、携帯動画に期待する視聴者の露骨な志向が見れて興味深い。
以上、BeeTVの配信部分における「新しさ」を列挙してみた。今後、どのように変化していくのかわからないが、現時点での「携帯で動画を見せる」ノウハウの最前線を見ることが出来る。
しかし、これらの機能の全てがスタンダードとして残っていくとは考えにくい。
便利だから残るとか、視聴者が喜ぶから残るというような単純な話ではないからだ。当然の話として、視聴者が支持したとしても経費がかかりすぎる機能は残りにくいのである。
長い目で見るならば、現視聴者の要望&経費・手間&新規会員への誘導力&新しい事に対する夢などのバランスによって機能は死んだり、残ったりするのだ。
そういう意味で、今後の携帯動画サイトでは、何をするかではなく、何をしないかというのが重要な決断になっていく可能性もあるということは頭に入れておきたいところである。
まさむね
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