ディープ新宿牛込地区の寺々にもう一つの東京を見る
寺や墓地を廻り、有名人の墓を探す。
僕の趣味の一つである。
先日、新宿区界隈の墓をめぐってきた。
一つ一つの寺は決して有名とはいえない。しかし、それぞれ足を運んでみると味のあるいいお寺さんだ。
今日のエントリーではそれらを紹介してみたい。
★

ここは、浄土宗。増上寺の末寺ということもあって、本堂の前の賽銭箱には、下り藤の三つ葉葵の紋がついている。
出羽松山藩江戸屋敷の菩提寺だったため酒井家歴代藩主の墓が残るが、すでに鬱蒼とした草の中に埋もれている感じだ。
一緒に行ったK君が思わず「まるでカンボジアだ」とつぶやくのもわかる。
ここには「月山」や「意味の変容」で有名な芥川賞作家の森敦の墓がある。墓場の入り口のすぐ近くだ。

例えば、こんな歌が教科書に載っているくらいだろうか。
白河の清きに魚のすみかねて もとの濁りの田沼こひしき
泰平の眠りを覚ます上喜撰 たった四杯で夜も眠れず
「べんべんかんこりう」、その名前の響きが面白いので、思わず口の中でつぶやいてみる。
しかしそれだけだ。

ここは、海老一染太郎師匠が眠ってる。
浄土真宗系の寺だけあって、親鸞聖人の立派な銅像があった。
墓地は、その銅像の脇を通った奥にある。
比較的整然とした雰囲気の墓地だった。
そこを出て北にむかうと、すぐに林羅山が眠る林氏専用墓地がある。しかし、鍵がかかっていて中に入れない。
ご存知の通り、林羅山は、朱子学を幕府の官学とした大学者だ。
「朱子学って先祖崇拝は否定しているんじゃないの?」というのはO君の素朴な疑問だ。
まぁ、そのあたりの曖昧さが日本的なところか。

それぞれ、多聞院は、真言宗、浄輪寺は日蓮宗の寺院だ。
松井須磨子の墓は墓地に足を入れるとすぐにわかる。右斜め前方にその名前が刻まれた墓石が見えた。
日本の近代演劇界の礎を築いた一人・松井須磨子の墓だけあって、大きくて目立つ。さすが墓石にも「花」があるというか...
一方、関孝和の墓は、墓地の一番奥にあるが、新宿区教育委員会の案内板があるからすぐにわかる。
墓石はかなり古く、風化しているのが、うっすらと鶴紋が見えて取れる。江戸時代の墓で家紋が残っているものは比較的少ないがこういう有名人の墓に家紋を発見すると嬉しいものである。

この幸国寺も日蓮宗系の寺院である。
ちょうど工事中でバタバタした感じだが、墓地は独特の鄙びた感じがいい。
大都会東京の中にもこんな場所があるんだとこの「取り残され」感を味わう。
東京の無名な寺の墓場を訪問すると、時としてこういう雰囲気に出会うことがある。これが墓巡りの醍醐味の一つである。

特に、墓地を入ってすぐ左側に加太家の墓地があるところをみると、かなり有力な家だったのだろう。
有力な檀家ほど本堂の近くに墓があるというのは墓巡りの常識のようなものだ。

この月桂寺は臨済宗の寺だ。本堂にはその名前を表すかのように月星の大きな紋がついていた。
墓地は広い。しかも、木々で鬱蒼としている。いい雰囲気を残している。
池辺三山の墓は入り口のすぐ近くにあるが、デンスケの墓は奥のほうだ。勿論、デンスケではなく、墓には、恒川家とだけ書いてあった。
両方の墓とも、ここの墓守さんが親切に教えてくれた。
ちょうど池辺三山の墓とデンスケの墓の間の比較的広い場所に柳澤家の墓所があり、そこには花菱のついた墓が沢山あったが、どれも苔むしていた。

ここの墓地の奥には、ゴジラの原作者として知られる香山滋(本名:山田鉀治)の墓がある。
また墓地の入り口には、立派なお地蔵さんがあった。
墓地は比較的高台にあるため、お地蔵さんを手前にして向こうは眺めがよくなっている。ちょっと得した気分になった。

前日、w-inds.の橘慶太がステージで歌っている途中で気管支炎で病院に直行するという大変な事故があったという。
僕は思わず、このお地蔵さんに「慶太の回復」を願ってしまった。
★
なぎら健壱が出ている東京新聞の宣伝ではないが、東京は広い。そして奥が深い。
まだまだ知らない場所が沢山ある。そして、その土地には、土着の人々が沢山暮らしている。
当たり前の事だが、電車を降りて、歩いてみると改めてそんなことがわかる。
まさむね
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