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2009年8月13日 (木)

朝の通勤時間に聴く「ホワイトアルバム」の意味とは何?

通勤時間にiPodでビートルズを聴くというのが僕の日課となっている。

勿論、その日の気分によって聴くアルバムが違うのであるが、「ホワイトアルバム」を聴く日は楽でいい。

disc1とdisc2を通しでアルバム登録しているため、通勤時間途中でアルバムが終わって、別のアルバムを選ぶというような操作が必要がないからである。



また「ホワイトアルバム」のよさは、玄関を出た瞬間に再生を始めると、だいたい、通勤途中でかかる曲が決まっており、電車が遅れたかどうかなどがわかるということにもある。

ようするに、「ホワイトアルバム」はストップウォッチのような役割もしてくれるのだ。



マンションの廊下で「Back In The U.S.S.R」の飛行機の離陸の音を聴く。今日一日が始まる瞬間だ。

駅までは徒歩で15分位だろうか。

駅の上りのエスカレータでは「Ob-La-Di,Ob-La-Da」の軽快なスカのリズムがかかる。

電車の中では、「Black Bird」「I will」等をBGMに、新書や携帯ブログを手にする自分だけの時間だ。

僕の通勤は、西武新宿線で高田馬場まで行き、そこで山手線に乗り換えて恵比寿へという経路であるが、高田馬場に着くと「Sexy Sadie」のちょっと気だるいピアノが聴こえてくる。よし、オンタイムだ!

       ★

「ホワイトアルバム」はビートルズのアルバムの中でも彼らの音楽性の幅広さを語るときに引き合いに出される名盤だ。

「サージェントペッパー」で創り込みの極北まで辿り着いたビートルズが、あえて、ラフな雰囲気でそれぞれの個性と音楽性を360度にわたって自由に展開したというのが一般的なこのアルバムへの評価だろう。

しかし、それまで完璧だった4人のチームワークはこの頃、かなり怪しくなってくる。

ビートルズの一員というよりも、個々のミュージシャンとしての自我の抑えが効かなくなってきたのもこの頃からであった。

特にリーダーのジョン。ドラッグへの沈溺、ヨーコとの不倫、新左翼への傾倒など、彼の心境には様々な変化が生じてきていた。



おそらく、この頃のジョンの心境を最もよく表している曲が「Revolution 1」である。

個人と集団、「I」と「We」、この頃のジョンは、ジョン=レノン自身であろうとする彼と、活動家の一人としての彼、この2つの間に引き裂かれていたのではないだろうか。



革命に対してポジティブな箇所では、ジョンは「We」を使う。



We all want to change the world(俺達は世界を変えたいと思っている)

We'd all love to see the plan(計画を聞かせてもらおうか)

We're doing what we can(出来ることなら何でもするぜ)




しかし、革命に対してネガティブな場面では、それは「I」になるのだ。



Don't you know that you can count me out in(数から外してくれないか、いや...)

All I can tell you is brother you have wait(早まるんじゃない)




後にジョンはこう語っている。

「暴力のためだったら、僕は抜ける。そこに花を飾るのでなければ、僕がバリケードに加わるようなことは期待しないでくれ。マルクス主義やキリスト教の名の下に何かを粉砕するからには、すべてを粉砕した後に、いったい何をやろうとするのかが知りたい。僕がRevolutionのすべてのバージョンで言ったのは、”change your head(君の頭を変えろ)”ということだ。」



僕はこのあたりにジョンの正直さを感じてしまう。

そしてこれは、ビートルズの一員としての彼の立ち位置ともパラレルではなかったか。

ここでも、ジョン=レノン自身であろうとする彼と、ビートルズとしての彼、この2つの間に引き裂かれていたように思えるのだ。



実は、この「ホワイトアルバム」だが、「The Beatles」という正式タイトル名になる前に、「A doll’s house(人形の家)」というタイトル名が検討されたという。

しかし、ちょうど同じ時期、ファミリーというグループが「Music in a doll’s house」という名前のアルバムでデビューしてしまったためこの案は破棄されたのだ。(「愛の事典」より)

「人形の家」。それは、裕福さの替わりに自由を奪われたノラという女性の物語であるが、ある意味、それは彼ら(Fab4)の境遇ともシンクロしているではないか。



そして彼らは、このアルバムのタイトルを「人形の家」から「ザ・ビートルズ」に変更して、自身のレーベル・アップルからの第一弾アルバムとして発売するのだ。

これは僕の推測だが、「ザ・ビートルズ」というタイトルには、「ザ・ビートルズ」こそ「人形の家」なのだから、という悲鳴にも似たつぶやきを込められているのではないだろうか。



個と集団との間の葛藤、自分自身の唯一性とマスの中の一人としての自分の葛藤。

ビートルズの面々がこの「ホワイトアルバム」のジャケットを真っ白にし、しかも購買者一人一人にユニークなナンバーをつけるという発想は、ここから読み解くことが出来る。

花嫁衣裳の白とアナロジーで解釈するならば、白いジャケットは、「このアルバムのジャケットは、リスナー一人一人の頭の中のイメージで染めあげてください。」を意味し、ユニークなナンバーは、「それは一人一人の個性ですよ。」というメッセージにも取れるのである。



昨年末に中山康樹氏が「ビートルズの謎」という本でこのユニーク番号のカラクリついて暴露してしまったが、それを踏まえてでも僕は、彼ら・ビートルズ4人が仕掛けた無謀ともいえるこの試みに賛辞を送りたい。あの混沌とした時代に、こんな馬鹿なことを考えた若者がいたのだというコンテンポラリな空気を感じたいのである。

       ★

さて、僕が乗った通勤電車は、新宿、渋谷を通り過ぎて、恵比寿駅に到着する。

僕のiPodからは「Cry Baby Cry」そして、すぐに「Revolution 9」が流れ出す。

一見、ファッショナブルな恵比寿という街を「Revolution 9」を聴きながら、オフィスに向かう。

ビルのエレベータに辿り着き、5階のボタンを押す。

エレベータが開けばそこがオフィスだ。

僕は「Good Night」が鳴り出す前にiPodのスイッチを切る。

さすがに、一日の仕事の始めに「おやすみ」はないだろう(笑)。



おはようございます!



僕(I)がワタクシドモ(We)になる瞬間だ。



さぁ、今日も一日頑張るぞ!!



まさむね

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