日本は老人医療費という名の子泣き爺を抱き続けるのか
ついに民主党が政権を奪取した。
官僚や、特殊法人、地方の土建屋、農協等、国と一般市民との間で既得権益者として利益を中抜きしてきた面々を一掃するという民主党の唯一の意味のありそうな公約をどのように実行してくれるのだろうか。
まずはこういった既得権益者(勿論、もうすぐ50歳になろうとしている僕も、この日本という制度の中では自覚、無自覚はともかく、なんらかの意味で既得権益者であることを踏まえつつも)ののさばりを排除すること。
僕が民主党に期待するのはただ、その一点である。
しかし、それ以外の政策に不安が無いわけではない。
例えば、あの構造改革はどうなってしまうのだろうか。
もともと、国の借金が800兆円を超え、今までのような地方への再配分が不可能になったことを受けての規制緩和、補助金カット、小さな政府を目指すというのが構造改革の主旨だったはずだが、それが、道半ばにして、いわゆる格差問題につぶされる格好で、いつの間にか、改革は後ずさりした印象すら受ける。
確かに構造改革からくる痛みはあるだろう。小泉元首相もそのあたりは何度も口にしていたはずだ。
しかし、おそらく、格差問題の根はもっと深い。
戦後史を振り返ると、輸出産業でGDPを押し上げてきた日本経済の余剰部分を、生産性の低い農村に再配分してきたのが、もう持たなくなってしまった、ようするに、昔から隠れ格差はあったのだ。簡単に言えばそういうことだと僕は認識している。
そして、小泉以降、彼の後を継いだ面々がいつのまにか市場原理主義=悪というマスコミの論調に押され、大量の借金に目をつぶる形で、自民党を元の再配分(バラマキ)政党に戻そうとしてしまったのである。
今回の選挙結果は、変えるフリをして結局、変わらなかった自民党への批判という面もあると僕は思っている。
★
それにしても、今後、民主党政権になって、どうなっていくのであろうか。
おそらく、政権奪取のための、いわゆるバラマキと言われた公約を本当に実行してしまうのだろう。
子供手当て、高速道路の無料化(首都高は例外)、農民への所得保障、田舎のヤンキー支援策に対して、都会の独身サラリーマンは政権奪取のコストとして見守るしかないのであろうか。
そういえば、民主党の公約の一つに後期老人医療制度の廃止というのもあった。
これは、これからどんどん増えていくことが予想される老人医療費に対する現役世代からの支払いに、とりあえずの歯止めをかけるという意味で大変、意義深い政策であったが、老人いじめとか、自動引き落としは残酷などという感情的な批判で元に戻ろうとしているのだ。
確かに、現在の老人達はこの制度廃止で安心感と利益を得るだろう。
しかし、これからの世代にとっては老人の医療費というのはさらに重荷になっていくに違いない。
そしていつか、現役世代が老人世代を支えくれなくなるような時代が必ず来るのである。
それでいいのであろうか。
子泣き爺(こなきじじい)という妖怪がいる。
山の中で泣いている赤ん坊。可哀相に思って、抱き上げると、その赤ん坊は爺に化けて急に強い力でしがみつき、みるみると体重が重くなっていく。そして、親切に抱き上げた人をつぶしてしまうという恐ろしい妖怪だ。
最初はいいかもしれない。しかし、時間がたつにしたがって徐々に日本全体を沈没させかねない老人の医療費(さらに年金も)、それはまさに子泣き爺のようなものだ。
子泣き爺を抱きながら一緒につぶれていくのか、それとも、とりあえず子泣き爺が小さいうちに、手から離してから、対策を考えるのか、今、日本はその瀬戸際に来ているようにも思えるのだが。
まさむね
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