いかにも日本的、地縛霊可視化装置としてのセカイカメラ
いつの間にか、会社でもiphoneを使用する社員が増えてきた。
全社員の1/3に迫る勢いだ。
ものが広まる時というのはこういうものなのだろう。静かに、しかし確実にシェアが増えているのである。
僕はまだdocomo派だが、自分で言うのもなんだが、iphone派に転向するのも時間の問題のような気もする。
さて、そのiphoneの世界で、今、最も話題のソフトが「セカイカメラ」(無料)である。
このソフトを起動して街を撮影すると、街に沢山のタグ(これを「エアタグ」と呼ぶ)が浮いているのが見える。誰かが、その場所で、「セカイカメラ」を使ってタグを書き込んで場所の説明をしてくれているからだ。
ご存知の方も多いと思うが、このような機能のことをAR(Argument Reality=「拡張現実」)という。
wikiではこのように説明されている。
現実環境にコンピュータを用いて情報を付加提示する技術、および情報を付加提示された環境そのものを示す。これは面白い。
この「セカイカメラ」を通して街を見ると、現実がSFチックに見えるのである。
本当の現実が、バーチャルリアリティのようにも見えるので、現実の「セカンドライフ」化ソフトともいえるかもしれない。
また、街角に人々の「つぶやき」が溢れていることが視覚化されて見えるので、「Twitter」の空間版ともいえるかもしれない。
いずれにしても、「世界を変える」ようなソフトは、僕たちの好奇心と創作意欲を掻き立てる。
このソフトは使い方によっては街を一変させ、そしてビジネスの世界に大きなインパクトを与える可能性すら秘めていると感じさせる。
しかし、このソフトが何故、日本で発明されたのであろうか。僕はそっちの方に関心が向いてしまった。そして、こんなことを考えた。
日本には「言霊」という考え方がある。それは、ある人が発言した言葉自体が、現実世界に影響を与えるという考え方だ。
ちょっと偽装科学的に言えばその言葉を発言した人の「想い」がある種の波動を起こし、現実を動かすということか?
おそらく、その延長線上に「地縛霊」という土着信仰がある。その場所でなんらかの不幸があった場合、その「怨念」がその場所に残って、人々に悪影響を与えるという考え方だ。
不気味ではあるが極めて日本的な発想である。
そして、ある意味、「セカイカメラ」はこの地縛霊の可視化とも言えるのではないだろうか。
その場所で、人々が考えたこと、感じたことがその場所に残り、他の人々に影響を与え続けるからだ。
また、この「エアタグ」は「エアポケット」という機能があって、家に持って帰ることも出来る。
それはちょうど、「座敷童子を連れて帰っちゃった」というような感覚に近いのかもしれない。
民族のフォークロアな発想が、現代技術の最先端に別の形で生まれ変わる、「セカイカメラ」とは日本だからこそ生まれたということも言えるかもしれないのである。
そう考えると次に考えるのは「背後霊」可視化ソフトだろう。それはちょうど、漫画のフキダシのような形にでもなるのだろうか。漫画というこれまた日本でこそ独自に進化した文化がそれを背景として、次世代にさらに発展するということもありうると思う。
しかし、この「セカイカメラ」がよりメジャーになっていくには、いくつかの課題がある。まずは電源の問題。これを起動ししながら歩くと、常に通信しっぱなしなので、結構バッテリーを食うらしいのだ。
そして、通信環境の問題。昨日も山の手線内で、友人の持っている「セカイカメラ」起動して各駅毎のエアタグを見る実験をしようとしたのだが、金曜日の夜ということもあって、なかなかつながらなかった。
また、このソフトを起動している時には、周りの人々からはすぐに何をやっているのかバレてしまうといういわゆる「テレビ電話」問題がある。この動作がちょっとまだ恥ずかしいのだ。そのせいか、docomoの必死の宣伝にもかかわらず、テレビ電話は全く広まらなかった。ちなみに、僕の記憶だと、テレビ電話を具体的に使っている人を見たのは、「恋空」でヒロが病室で死にそうな時にミカにその最期の姿を見せるシーンくらいだろうか。
さらに言えば、この「セカイカメラ」の想定される問題点として、これがイジメや業務妨害的なネガティブな使われ方がしないとも限らないということもあるのだろう。また、「セカイカメラ」中の交通事故とか...まぁ、懸念に終わればそれにこしたことはないが。
そういえば、「エアタグ」を探して歩いていると、店の看板というのは現実世界の「エアタグ」にも見えてくるという逆転感覚も面白い。ちょうど、ポッドキャストを聴いていて、これがもっと簡単に、しかもより多くの人が回線なしで聴けたらいいのにと思ったら、「それって普通のラジオじゃん」と思いつくような感覚だ。
先ほど言ったことを再度言おう。「世界を変える」ようなソフトは、僕たちの好奇心と創作意欲を掻き立て続ける。「セカイカメラ」はまだまだはじまったばかりだ。
まさむね
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