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2009年11月15日 (日)

西野カナの「もっと・・・」で気になった「君」と「あなた」

西野カナの「もっと・・・」の着うたDL数が好調のようだ。

先日、ヒルクライムの「春夏秋冬」が合計170万DLという話を聞いたばかりだが、この「もっと・・・」もその数に迫るかもしれない。

RIA(日本レコード協会)の着うたフルのDL数の推移によると以下のような動きをしているのだ。

一度、下がったかと思ったら、再度、上がるというのは、ロングヒットの兆しがあるということではないだろうか。期待して推移を見守りたい。



10.13~10.20 1位

10.21~10.27 3位

10.28~11.03 1位

11.04~11.10 4位


さて、この歌をなにげなく聴いていて、一つ思ったことがある。その歌詞がかなり積極的なのだ。

今すぐ会いたいもっと声が聞きたい

こんなにも君だけ想っているのに

不安で仕方ない何度も聞きたい

ねぇ本当に好きなの?


状況から察するに、オトコの方は今ひとつ、消極的なようだ。一方、オンナの方はかなり焦っている感じすらする。いわゆる肉食的なのである。先にあげたヒルクライムの「春夏秋冬」が、オトコからオンナへ「末長く、無難な愛」を求める歌詞なのとは対照的だ。これも現代のご時世を表す一つの現象なのだろうか。



ところで、僕はこの西野カナの「もっと・・・」を聞いて、また別の事を考えた。彼女は相手の男性を「君」と表現しているのだ。そういえば、歌謡曲(J-POP)において、いつから、相手の男性を「あなた」ではなく、「君」と呼ぶようになったのであろうか。そんな疑問がわいたのである。

そこで以下、ここ20年間の女性シンガーのヒット曲を50曲選んで相手をどう呼んでいるのかを調べてみた。(僕も相当にヒマだな)勿論、選曲は僕の主観が多分に入っているが、大体、その時代のヒット曲と呼ばれていた曲は網羅していると思う。

「あっあの曲が入っていない」などと思われる方は、どうぞ、ご自分でお調べください。





































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































No CD発売日 曲名 アーティスト名 自分 相手
1 1989.04.21 diamond プリプリ --- ---
2 1990.06.27 会いたい 沢田知可子 あなた
3 1991.05.21 あなたに会えてよかった 小泉今日子 あなた
4 1991.11.07 PIECE OF MY WISH 今井美樹 --- あなた
5 1992.09.19 決戦は金曜日 ドリカム あなた
6 1992.09.23 DA・KA・RA 大黒摩季 --- あなた
7 1993.05.19 揺れる想い ZARD --- 君、あなた
8 1993.12.01 ロマンスの神様 広瀬香美 あなた
9 1994.02.09 ただ泣きたくなるの 中山美穂 あなた
10 1994.07.21 恋しさとせつなさと心強さと 篠原涼子 --- あなた
10 1994.10.24 春よ、来い 松任谷由美
11 1995.02.01 masquerade trf あなた
12 1995.02.20 ら・ら・ら 大黒摩季 あなた
13 1995.02.22 サンキュ ドリカム --- あなた
14 1995.05.10 TOMORROW 岡本真夜 ---
15 1996.03.06 I'm proud 華原朋美 あなた
16 1996.10.07 これが私の生きる道 Puffy あなた
17 1996.11.04 PRIDE 今井美樹 あなた
18 1996.11.27 a walk in the park 安室奈美恵 あなた
19 1997.01.15 FACE globe --- あなた
20 1997.02.19 CAN YOU CELEBRATE? 安室奈美恵 --- ---
21 1997.04.23 Hate tell a lie 華原朋美 あなた
22 1997.05.16 ひだまりの詩 ル・クプル あなた
23 1997.10.15 WHITE LOVE SPEED あなた
24 1998.01.21 長い間 kiroro 君、あなた
25 1998.07.17 花火 aiko あたし あなた
26 1998.08.05 Trust 浜崎あゆみ あなた
27 1998.10.28 ALL MY TRUE LOVE SPEED あなた
28 1998.12.09 Automatic 宇多田ヒカル ---
29 1999.01.20 ここでキスして。 椎名林檎 あたし あなた
30 1999.03.10 長いため息のように ブリグリ あなた
31 1999.07.14 Boys & Girls 浜崎あゆみ
32 1999.09.09 LOVEマシーン モーニング娘。 あたし あんた
33 1999.12.08 Love,Day After Tomorrow 倉木麻衣 ---
34 2000.10.25 Everything MISIA あなた
35 2000.12.13 M 浜崎あゆみ --- ---
36 2003.12.17 Jupiter 平原綾香 あなた
37 2003.12.17 さくらんぼ 大塚愛 あたし あなた
38 2004.02.11 ハナミズキ 一青窈
39 2005.08.31 GLAMOROUS SKY 中島美嘉
40 2006.06.28 A Perfect Sky BONNIEPINK --- 君、あなた
41 2006.09.27 三日月 絢香 --- 君、あなた
42 2007.02.28 Flavor Of Life 宇多田ヒカル
43 2007.03.07 CHE.R.RY YUI ---
44 2007.09.12 愛のうた 倖田來未
45 2008.01.23 そばにいるね 青山テルマ あなた
46 2008.04.16 かえりたくなったよ いきものがかり
47 2008.06.11 Moon Crying 倖田來未 ---
48 2009.04.29 明日がくるなら JUJU ---
49 2009.05.13 Love forever 加藤ミリヤ
50 2009.10.21 もっと・・・ 西野カナ


こう見ると、どうやら、1990年代の終わりから、「君」が増えてきているような気がする。(また、この頃から、女性が男性の立場で歌う「僕」系の歌も増えてきたように思う。)

実は、僕は以前からJ-POPにおける1998年問題というのに注目しているが、この年は、いわゆる小室哲也の歌が下火になり、自分で自分の歌を歌うような女性シンガーが大量に登場してきた年なのである。

例えば、宇多田ヒカル、浜崎あゆみ、aiko、MISIA、kiroro、椎名林檎、それに毛色は違うが、モーニング娘。もこの年にメジャーデビューしているのだ。

また、この年と前後して、1997年にCocco、1999年に倉木麻衣、矢井田瞳、2000年に鬼束ちひろなどもデビューしている。

そして、これらの新人の中では、宇多田ヒカル、倉木麻衣、浜崎あゆみといったその後、大ブレイクする面々が「君」系のシンガーとして、おそらく、昨今の「君」ブームを定着させたのではないかというのが僕の推理である。



そして、彼女達の歌詞のメインテーマは相手の男性(「あなた」)への愛ではなく、「自分」そのものであることが多い。そして、男性を斜め下から見上げる「あなた」目線ではなく、「君」と呼ぶこと(=水平目線)が、現代という時代の雰囲気にあっているのかもしれない。

あるいは、リアリティのある恋というよりも、恋する自分に恋するといった自己イメージに対する欲求の強さの反映として、男性との距離感をかもし出す抽象的な「君」が頻繁に使われだしてきているのかもしれない。



ただ、本当のところは、まだ、よくわからない。



まさむね

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