「リアルクローズ」で思い出すマルクスの「命がけの飛躍」
「リアルクローズ」のわかりやすさが好きだ。
仕事と結婚の狭間で悩む天野絹江(香里奈)、田舎に帰って家業を継ぐことを決心し、絹江にプロポーズした山内達也(高岡蒼甫)、仕事一筋の憧れの上司・神保美姫(黒木瞳)、仕事は出来るが、契約社員の限界を感じている佐々木凌(加藤夏希)..
おのおのがそれぞれのテーマに沿って闘いながら生きている。この前向きな雰囲気が好きなのだ。
勿論、彼等彼女達がかかえているテーマが現代の世相とジャストミートしているかどうかは微妙だ。このドラマの力強さと明るさは、現代というようりも、むしろ90年代のあの雰囲気を持っているからだ。これは僕の主観ではあるが、このドラマにおける香里奈のキャラは、近年、最も現代的だと思われる『ラスト・フレンズ』の上野樹里や長澤まさみよりも、『29歳のクリスマス』における山口智子や松下由樹に近いように思える。(「「29歳のクリスマス」と「ラストフレンズ」の埋め難い時代差」参照の事)
また、このドラマの底辺に流れる「恋愛の終点に結婚がある」という観念、キャリアアップに対する肯定的な欲望なども現代的というよりも、おそらく90年代的なのである。
そして、これがこのドラマを僕が前のエントリーで古典的と言った理由である。
さて、ドラマの本筋とは別に、僕は以前からこのドラマが「オンエアリンク」(「リアルクローズ」で始まった「オンエアリンク」に注目だ)というテレビドラマと通販との連動企画であるという点に注目している。
その視点から言わせてもらうならば、昨日、放送した第4話でも、いくつかの衣装の売れ行きが気になった。
一つ目は、バイヤーとなった絹江(香里奈)が、売れ残ってしまった商品を自ら身に付けて、店内で大声で(わざとらしく)宣伝して歩いき、結局売り切ったその白いワンピースである。これは、番組終了後にも、見事に売り切れていた。ちなみに、同じシーンで着けていた、ドラマ内では「ショートケーキに乗っているイチゴみたいでかわいい」といわれていたピンクの帽子も売り切れていた。ここには、ドラマと現実との幸福なる一致があった。
二つ目は、一つ目の商品完売で自信をつけた絹江が独断で、価格を上げて売ろうとしたけど、売れなかった花柄の肩だしワンピである。自信満々に本来7割引のところを3割引にして売ろうとするのだが、「肩だし」というところのハードルが高く、結局売れ残ってしまう。100万円の損害とのこと。そして、絹江は上司の田淵勇作(西島秀俊)にえらく怒られるのであった。しかし、「オンエアリンク」での結果はドラマとは違って、完売。あれあれ?という感じだ。
そして三つ目が、自宅で待つ達也のもとに走って帰ろうとする時に履いていた黒いロングブーツである。何故、このブーツの売れ行きが気になったのかといえば、彼女が走っていくシーンにおいて何度も何度もその足元がアップになったからである。それこそ執拗といってもいいくらいだ。おそらく、「オンエアリンク」の存在を全く知らない視聴者にとっては、まったく意味不明の挿入シーンだったと思われる。しかし逆に、「オンエアリンク」を知っていれば、「あっ、このブーツ売ろうとしているなっ」というのが明らかにわかってしまうカメラワークであった。
そして、その結果は、残念ながら見事に売れ残り。たしかに22,050 円(税込)と高価ではあったが、あれだけの宣伝工作をしているのに売れてはいないのだ。
この三つの商品の売れ行きを見て考えさせられた。
やはり、ドラマ中で売れ残った商品(ネガティブイメージのついた商品)でも、モノがよければ売れるのか。また、逆にドラマ中に強力にプッシュしたとしても、売れないものは売れないということか。いや、逆にプッシュしすぎた臭みがでたのか...
当たり前の話であるが、ビジネスは難しい。
かのカール・マルクスは『資本論』においてモノを売るということには「命がけの飛躍」があると言ったが、まさしく、何が、どうやったら売れるのかは神のみぞ知るということだろうか。いや、これを「読む」ことが面白いのだ。
おそらく、現代はますます、「命がけ度」の高い時代になっている。しかし、それはそれでやりがいのある時代だと思う。
まさむね
※ちなみに、本エントリーにおける「売れた、売れない」は、翌日の0:50頃の話で、それ以降売れたかもしれません。
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