幕末の名場面を周到に避けるのは大河ドラマの伝統か
昨日に引き続き、「龍馬伝」の話。
一昨日の「龍馬伝」の画面の迫力に思わず見入ってしまった。
寺田屋騒動の回である。正直、自宅のテレビでは、詳細はよくわからなかったが、少なくとも画面を飛び出さんばかりの迫力は伝わってきた。
史実では、この騒動で龍馬はピストルで相手を撃って殺しているらしいが、ドラマの中ではあくまで脅しとして使用していた。
そういえば、今回の「龍馬伝」では、いくつかの幕末有名場面が周到に避けられているようにも思える。
この、史実(あるいは通説)を微妙に避けるというのは「篤姫」にも見られたもので、もしかしたら、NHKの伝統なのかもしれない。(「大河・篤姫が「その時歴史が動いた」篤姫と違う5つの点」参照のこと)
具体的に今まで「龍馬伝」で放映された場面からも、いくつか例をあげてみたいと思う。
坂本龍馬が勝海舟と最初に会う場面、勝海舟の回顧録に基づき、一般的には龍馬は海舟を斬りに行ったといわれている。しかし「龍馬伝」では、海舟を斬りに行ったのは龍馬ではなく、岡田以蔵ということになっていた。
(この龍馬と海舟の有名な出会い。「篤姫」では龍馬(玉木宏)と海舟(北大路欣也)の間では、その有名な絡みがあった。)
また、その後、以蔵が海舟の用心棒をした際に、海舟を殺そうとした刺客を、逆に以蔵が切り殺し、海舟に「そんなにむやみに人を斬るものではない」と以蔵をたしなめると、逆に以蔵に「殺さなければ、先生が殺されていました」と言い返されたという逸話は避けられていた。
さらにいえば、前々回の薩長の密約の時も、西郷が数日間、なかなか薩長同盟の話を切り出さず、木戸が怒るというような伝説があったと思うが、「龍馬伝」では、そういった駆け引きは見られなかった。このドラマでは、あくまでも西郷と木戸は龍馬の引き立て役なのだろうか。
まぁ、僕は特に幕末に詳しいわけではないので、それはそれで、楽しく見れるのだが、一部のマニアには、不満の声もあるようだ。視聴率が若干低いようにも伝えられているのは、そういったことも関係があるのかもしれない。
ただ、以前から何度も書いたが(「「篤姫」から「龍馬伝」に繋がる家紋ミスを深読みする」、「「抱き菊の葉に菊」紋は、元々西郷家の紋だったのかも」)、僕はまだ西郷の家紋に関しては、疑問を抱き続けている。
実は、そのことをNHKに問い合わせてみたのだ。
そうしたら、以下のような回答をいただいた。
いつもNHKの番組やニュースをご視聴いただき、ありがとうございます。
お問い合わせの件についてご連絡いたします。
遅くなり申し訳ございません。
西郷さんの家紋につきましては、本作に関わらず、以前の大河ドラマにおきましても、ずっとこの菊紋を使用して来ました。昔の担当者は当然墓所などを取材し、当時の考証家の方々へリサーチをした上で採用しています。現在、その根拠などを調べようとしていますが、なにぶん、収録が佳境に入っており、時間が取れません。もうしばらくお時間をいただければと思います。
よろしくお願い申し上げます。
今後とも、NHKをご支援いただきますようお願いいたします。
お便りありがとうございました。
龍馬伝 担当
NHK視聴者コールセンター
僕は、この誠実な文面に感動すらしてしまった。
NHKが西郷の家紋に関してどういった調査、経緯があったのか、先方も一段落したら回答をいただけるらしい。楽しみである。
まさむね
いろは丸事件と陸奥陽之助 〜「龍馬伝」を見て〜(10.18)
坂本龍馬を救った組み合い角に桔梗紋の紋付(09.06)
何故,龍馬は急に紋付を着るようになったのだろうか(07.28)
「篤姫」から「龍馬伝」に繋がる家紋ミスを深読みする(07.03)
「龍馬伝」でどのように尊王を描くのかが楽しみだ(04.05)
「龍馬伝」の”無理”が微妙に気になり出している(03.29)
龍馬と義経とタケルに共通する日本史上の英雄の典型(02.03)
リアリティがあるがゆえに、龍馬伝は細かい破綻が気になる(01.23)
« 坂本龍馬を救った組み合い角に桔梗紋の紋付 | トップページ | 日本の伝統を信じるからこそ外国人地方参政権に賛成 »
「テレビドラマ」カテゴリの記事
- 「平清盛」 雑感(1999.11.30)
- なずなはヒールだ(2000.08.15)
- 大仁田と鶴太郎(2000.08.22)
- 鹿男あをによし 最終回で全ての謎はとけたのか(2008.03.20)
- ROOKIES 高福祉型×ネオリベの代理闘争(2008.05.10)
この記事へのコメントは終了しました。
« 坂本龍馬を救った組み合い角に桔梗紋の紋付 | トップページ | 日本の伝統を信じるからこそ外国人地方参政権に賛成 »
コメント