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2010年10月14日 (木)

「ビートルズ都市論」(1) 労働者の町・リバプール

最近、ヤンマさんのブログ「BEATLESを歌おう♪ Yeah Yeah Yeah!」で、「レニーとヤンマの英国珍道中」が連載されていて、お気に入りだ。いつか、僕もリバプールに行って、その土地にビートルズを感じたい、そんなことを感じさせる内容である。



ここで告白だが、実は、僕もリバプールに行ったことがあるのだ。それは今から15年ほど前。

僕が海外ゲームのバイヤーをしていた頃の話だ。リバプールにあったシグノシスという会社にプレステのレースゲーム購入の交渉に行っていたのだ。

しかし、僕はシグノシスのオフィスで打ち合わせをしてすぐにリバプールをあとにしてしまった。だから、誠に変な話ではあるが実は本当にリバプールへ行ったかどうかも曖昧だったのだが、当時の同僚と話をしてそれが本当だということがわかったのである。

当時はそれほど、忙しかったということでもあるが、一方で、その時期、僕のビートルズに対する情熱も「冬眠中」だったということである。



全く惜しいことをした。僕のリバプールに対する思い出は、「無」に等しいのだから...

僕もいつか、ちゃんとリバプールへ行ってみたい。そして、ペニーレインの青空を眺め、ストロベリーフィールズの門の前で幻想的な気分に浸りたい。

        ★

さて、先週末の連休に僕は「ビートルズ都市論」(福屋利信著)を読んだ。

ビートルズの音楽をその背後にある都市の歴史、経済、社会などから読み解こうとする一冊だ。具体的に言えば、ビートルズが誕生したリバプール、ロックンローラーとして成長したハンブルグ、世界のビートルズに飛躍したロンドン、そしてオマケの東京、の4都市の都市の歴史、経済などを語りながら、それぞれの都市からビートルズが何を吸収していったのかを論じている。正直言って僕の好みの視点である。



まずはリバプール。この街は、かつて奴隷貿易で栄えた。その後も、綿花貿易や造船業など、文化的というようりも産業都市として、大英帝国の繁栄を下支えした土地であったという。

この本でも、奴隷貿易の拠点であったリバプールは、このように描かれている。

西洋文明のエゴイスティックな繁栄に加担した罪を背負った町でもあるのだ。


また、当時、ロンドンに暮らしていたピーターバラガンの言葉を引いている。

「南イギリスから見れば、・・・北部の町は人も暗いってイメージがある。一言で言えば、景気の悪い地方都市という感じ」


確かに、リバプールにはこれといった文化遺産などない。敢えて言うならば「つまらない」労働者の町に過ぎないのである。しかし、ビートルズの面々は後々までこのリバプールに、そしてそこに住む人々に対する愛情を抱き続けた。その証拠がポールの「ペーニーレイン」とジョンの「ストロベリーフィールズフォーエバー」の2曲だ。

ペニーレインの明るい町並みとストローベリーフィールズという幻想的な場所...



この本では、ビートルズの音楽の中に流れるリバプールの都市の匂い、つまり、ロックビートのルーツである黒人文化、想像力が豊かなアイリッシュ文化、異文化を許容するカソリックの伝統、そして、ロンドンをはじめとする南イングランドへの反骨心を読み込んでゆく。

いずれにしても、ビートルズの音楽の底に流れる彼らのハングリー精神は、このリバプールという土地が醸造したというわけである。



確か「フリーアズアバード」のプロモーションビデオの冒頭で、ビートルズの4人のメンバーが背中を丸めながら労働者の格好をして造船工場に入っていくシーンがあった。この映像は決して、単なるジョークではない。それは、彼らが送ったかもしれないもう一つの(人生=「現実」)そのものなのだ。

ビートルズの音楽が全世界を席捲し、人々の琴線に触れることができたのは、彼らのファンタジックな歌の裏面にそういった「現実」が、こびりついた業のように張り付いていたからかもしれない。僕はこの本を読みながらそんなことを考えた。



まさむね

「ビートルズ都市論」(1) 労働者の町・リバプール

「ビートルズ都市論」(2) 野生と知性の街ハンブルグ

「ビートルズ都市論」(3) 彼らには冷たかったロンドン

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