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2010年11月29日 (月)

「龍馬伝」最終回~史実とドラマとNHK的イデオロギーの狭間~

「龍馬伝」の最終回終わった。

僕は、高杉晋作が戦場を三味線を弾きながら歩いているシーンを見てから、史実云々をするのは馬鹿らしくなってやめたが、やはり気になったのは、最後まで龍馬の思想にほとんど、尊皇が出てこなかった点である。そして、いつの間にか攘夷も無くなっていた。

確かに、現代の価値観からしてみれば、尊皇も攘夷も時代遅れかもしれないし、それを表現したらいわゆる視聴率は取れないし、NHK全体の左寄りの思想とも矛盾してしまうのかもしれないが、それにしても龍馬の思想が時代の制約を全く受けていないのには不自然さを禁じえなかった。何故、龍馬だけが時代を超越していたのか、それは彼が他に類を見ないほど大人物だったからというオチというのは、いまさらながら、小学生向きのシナリオである。



考えてみれば、史実とドラマの帳尻を合わせるため、いたるところに不自然さがあった。

僕がずっと気になっていたのは、山内容堂の行動の不合理さである。おそらく、史実としては、「幕府がなくなったとしても、自分を含め慶喜も権力者の座に居続けるための画策としての大政奉還の建白という行動」なのであろうが、ドラマでは「龍馬に説得されて四民平等への時代の流れに抗することが出来なかったという心の動きに従った行動」にせざるを得なかったのであろう。



最終回もそうだ。新政府構想の中に、松平春獄の名前を見つけた中岡慎太郎は激昂して、龍馬に対して討論をしかける。しかし、その中岡は、龍馬の勝海舟譲りの地球儀を持ち出してのロマンティズムにいつの間にか巻き込まれているのだ。

中岡のそれまでの、「結局、徳川を政権からはずさなければ新しい世は来ない!」という現実論のまま通したら、暗殺の時も討論していなければならなくなる。それはあまりにも滑稽なので、暗殺のシーンまでには中岡と龍馬は同じ方向を向いているということに無理矢理持っていったのであろう。

人の心とはそう簡単には変わらないというようなことを中岡に言わせておいて、中岡自身が、龍馬の説得に簡単に変わっているのは、いかがなものか。それほど龍馬というのは人間力があるという演出の一つなのか、これは。



しかし、多くの口うるさい視聴者に対して、説得させるというのは確かに難しいことには違いない。

僕は、「実際に龍馬と一緒に暗殺された藤吉が、シャモを買いに行っている間に暗殺が行われてしまっていた」という誰にでもわかる矛盾を敢えてドラマに組み入れることによって、メタメッセージとして「これはドラマですよ」ということを暗に訴えざるを得なかったスタッフの苦肉の策もわからなくはないのである。



いずれにしても、来年も再来年も、「主人公だけが現代的な感覚を持つ」という大河ドラマの法則は続くのであろうか。

そして、そんなことを言いながらも、僕達は、また続けて見てしまうのであろうか。



まさむね

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