西野カナによる「気持ち」だけのアウトソーシング
レコ協から発表された今年の着うたフルベスト10を見たら、西野カナが4曲も入っていた。
レコ直は西野カナでもっているという話を聞いたことがあるが、まさにそんな感じである。
1 会いたくて 会いたくて 西野カナ
2 Butterfly 木村カエラ
3 Best Friend 西野カナ
4 if 西野カナ
5 春夏秋冬 ヒルクライム
6 また君に恋してる 坂本冬美
7 もっと強く EXILE
8 君って 西野カナ
9 FOREVER LOVE 清水 翔太×加藤 ミリヤ
10 ありがとう いきものがかり
西野カナの歌は、現代の肉食系女子の応援歌のような内容の歌詞が多いと『家紋主義宣言』に書いたのは、もう1年位前の話だが、この1年、状況は全く変わっていないようだ。
彼女の歌はとにかく、自分の気持ちを前面に出すことによって成り立っている。そこには状況説明は一切無い。そこが彼女の個性でもあり、時代が求めているものなのかもしれない。
単純にいってしまえば、僕らが若い頃に親しんできた歌には、かならず歌の世界の状況説明があって、その中に心情というものがあった。
そして、歌の中に出てくるグッズが、世界観や願望を表していた。例えば、荒井由実が、「窓辺に置いたイス」とか「バスルームのルージュ」というとそれだけで、いろんなものが伝わったのだ、あの頃は。
90年代に流行った小室の歌もそうだ。そこには、ストリートの情景が描かれていた。
それが、西野カナの歌の歌詞にはそういった外部が一切無いのである。あるのは相手との距離から生じる自分の気持ちだけだ。
これは凄い。
状況は、聴く人それぞれにお任せしますので、私は「気持ち」だけをお届けします!ということなのだろう。これって、まさに気持ちのアウトソーシングだ。それだけ、J-POPが個別ユーザー対応型になったということなのかもしれない。
一方で、上記ベスト10の5位に入っているヒルクライムの「春夏秋冬」は、かつての男性の歌に見られたギラギラは無い。春夏秋冬、来年も再来年もあなたと一緒にいたいですねという、穏やかで永遠の愛が歌われている。これは湘南乃風の「純恋歌」や、GReeeeNの「愛唄」と同じ系譜にある曲だ。
しかし、この2曲が、どちらかといえば、ヤンキー系なのに比べると、草食系の歌である。
もしかしたら、この男性像は、女性から見た理想的男性像なのかもしれない。
欲望が薄く長くなった男とと性急に愛を求める女、いい悪いは別にして、これも時代の特徴なのだろう。
あまり関係ないが、この坂本冬美は別にして、ベスト10に入った女性シンガーは、西野カナにしても木村カエラにしても、加藤ミリヤにしても、漢字+カタカナの名前だ。
まさむね
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