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2011年2月15日 (火)

「白熱教室」はゲームにならないだろうか

サンデルの政治哲学 <正義>とは何か」小林正弥著をようやく読み終えた。二週間もかかってしまった。

どうもこの歳になると、こういう観念的な本はしんどい。いや、正確に言えば、観念的だからしんどいというよりも、僕が学生の頃から馴染んできたフランス現代思想とは別の発想についていくのがしんどかったのかもしれない。

言うまでもなく、サンデルをはじめとするアメリカの哲学者はプラグラティックだ。そして、「真面目」だ。僕は、この「真面目」さに慣れるのに少々時間がかかったのかもしれない。

この本の中で、著者の小林先生は、僕が慣れ親しんでいたフランス思想=ポストモダン思想を一刀両断にしている。

ポストモダン思想においては、「私たちはどう生きるべきか」「政治経済はどうあるべきか」といった問いに建設的な答えを見出すことはできないように思われる。そもそもポスト・モダンは、そういった理想や真理の体系を批判する所から生まれた知だからである。原理的に理想を見出せない思想は、いわば知の自殺行為とも言えるのではないだろうか。


このセリフは、ポスト・モダンに対する批判であるとともに、学生時代にポストモダンに慣れ親しんだ僕らへの批判のようにもとれた。そういえば、僕らはかつて、哲学を生き方に役立てるような”セコさ”を嫌っていたように思う。そんな時代だったのである、80年代は。



しかし、それはそれとして、この本を読み進んでいくと、小林先生が解説するアメリカ哲学の流れ(功利主義→リベラリズム→リバタリアニズム→コミュニタリズム)が非常に分りやすく頭に入ってくる。僕はこの正月にサンデルの「白熱教室」をチラチラと見たが、その記憶が蘇ってくる。一人で本を読みながら考えるのもいいが、ああやって、その場を共有しているみんなで考えるというのも素晴らしいことだ。僕が30年遅く生まれていたら、サンデルにハマっていただろうと思う。



また、この政治哲学という学問を理解すると、例えば、戦後の日本の政治史が、一つの必然的な流れとして理解できるのが面白い。

例えば、戦後の池田隼人の所得倍増計画は、まさに功利主義的であった。

それに対して、田中角栄はリベラル、そして、その直系である小沢一郎もリベラル色の強い政治家だということが分る。

リベラルというのは、自由と同時に、格差是正を政策の中心の置く。

さらにいえば、政策から、いわゆる<善>的要素を排除し、合理的な仕組みを作れば、市場(民間)が結果としていい社会を作るはずだ、あるいはそういった公平な仕組みによって出来た社会はいい社会だ、とする、小さな政府=構造改革派の小泉純一郎はリバタリアンであるということが、今更ながらよくわかる。

そして、この本を読む限り、小林先生は、リーマンショックでリバタリアン(経済的にはネオリベ)の矛盾が社会的に露呈した後に、登場した民主党を、コミュニタリズム=共和主義が一番、サンデルライクであることを言っているように思う。勿論、現在のグダグダの民主党ではなく、最初の2009年9月時点で、鳩山前首相が「お任せする政治から引き受ける政治」「新しい公共」「友愛」などといった言葉であり種の理想を目指そうとした民主党のことではあるが...



さて、僕はこの本を読んで、この政治哲学、そして「白熱教室」を一つのゲームに出来ないかと考えた。まず、ユーザーにいくつかの質問に答えてもらう。そうしてその人が先ほどの上げたいくつかの哲学(功利主義、リベラリズム、リバタリアニズム、コミュニタリズム、あるいは、共産主義、国家主義、保守主義など)のどの考え方に一番近いのかというそのスタンスを割り出す。

それを踏まえて、さらに複雑な状況を仮想空間などでシュミレートさせ、いろいろな人と議論をし、問題を解決しながら、自分の考えを深く理解する、つまり自分は一体、どのような思想に一番しっくりくるのかということを理解させるというのがこのゲームの目的というわけである。

もしかしたら、例えば、自分はリバタリアンだと思っていたのが、実はただの保守主義者だったなんていうことが分ったりしたら面白いのではないか。



まぁ、現時点では、かなりあやふやな構想ではあるが、ゲーム化力のあるクリエイターだったら、この「種」を果実にしてくれるのではないかと僕は妄想するのであった。



まさむね

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